インスタでたまにいるこういうアカウント
このようなアカウントからたま〜にフォローが飛んでくることがある。お!女の子だ!と思ってフォロバをすると、思想強めストーリーが投稿されて幻滅するのだ。人生こんなことの繰り返しである。
まぁどう考えたって怪しいのだが、スマホ一台で稼げるとか、そうした甘い言葉には人間弱い。しかも大体この手のアカウントって2週間くらいで凍結されるものだが、彼女はまだ(9月14日現在)生きている。
でこの人がビジネスに興味がある人は気軽に連絡してきてね!みたいなストーリーをあげていて、もちろん無視していたのだが、やっぱり気になってきた。
こいつはどんなビジネスをやっているのだろうか?
ということで、連絡してみた。
というかご丁寧に向こうからDMしてきてくれたので返信した。
ビジネスを一緒にやってくれる人を募集する目的はただ一つだ。それは
もっとお金が欲しい(あるいは必要だ)から
である。そのために事業を拡大しなければならないけど、一人でできる仕事の量には限界がある。だから新しい人を連れてきて、自分にできない仕事をやってもらう。向こうにメリットがなくて、人員募集をするということはあり得ない。
また、ちっちゃいビジネスの場合、やる気がなくて仕事もそこまでできない、いわゆる「普通の人」をメンバーとして迎えることは、特に避けられる。人もお金もないフェーズでは、野心的で成長意欲があり、特徴的なスキルを持った人を迎えたいと考えるのは当然のことだ。スタートアップの会社なんかはみんなそんな感じである。
そんな中、彼女はわざわざ見ず知らずの連中に自分からDMまで送って、無差別的に人集めをしている。これはどういうことなのだろうか。俺のプロフィールがそんなに優秀そうに見えたということか。だとしたらありがたいことだ。今夜ディナーでもどうです。サイゼリヤに行きましょう。
さて、基本的にはグループ通話での説明会で説明があるところ、彼女からLINEでの個人通話をとりつけた。色々聞いてみよう。
なお、別に晒すことが目的ではないので、彼女のプライバシーには最大限配慮する。
答え合わせ
意外と真っ当なビジネスをしていた。
ただ私はやらない。
やること
彼女は、要するに代理店事業サービスを提供している会社(仮にA社)のサービスを使って、代理店ビジネスをしているようだった。
インスタで見込み客層をフォローしてアカウントを成長させ、ストーリーで商品を紹介して、反応があった人にDMを送って、リンクを踏んで商品を買ってもらう。商品を買ってもらえればA社からインセンティブが入る。
インセンティブには通算ボーナスというものがあり、商品を今までに売った通算の販売実績に応じて、毎月定額がボーナスとして加算されるようだ(これはすごいね)。つまり、一度頑張ればあとは脳死で金が入ってくる、というのが彼女の主張であった。
で、ストーリーの投稿とかDMの返信とかについては、ノウハウがあるから自分で考える必要はなく、用意されたものをそのまま送ればいいということだそうだ。これがスマホ一台でポチポチできるということのカラクリか。
一つ、私の予想が外れていたのは、ブランドものは単純に彼女の趣味(らしい)ということだった。ビジネスで扱う商品はブランド品ではなく、主に「仕事をしている人」向けの商品(サービス)だった。彼女が何の商品を扱っているのか、具体的な種類までには言及しないが、扱うことのできる商品は色々あった。それはA社の取り扱っている商品だと考えられる。
つまりやっていることはアウトバウンド営業とほぼ一緒だ。別に怪しくないし、家族に言えないようなビジネスでもない。
報酬面
やはり気になるのはお金だ。
ここで、プレイヤー、つまり私たちがお金を払わなければならないことの説明があった。ここがちょっと臭いといえば臭い。
ビジネスを始めるには、A社のプランに加入する必要があるという。プランには無料プランとフルサポートプランの2種類があり、無料プランでもビジネス自体は行うことができるが、ノウハウなどのサポートが一切ない。
フルサポートの有料プランは初期費用5万円税抜、月額1.5万円税抜で、まぁ払えなくはない金額なのが巧妙だ。
彼女自身も、副業は怖いというイメージがあるという私の主張には同意しつつ、サポートなしでビジネスを軌道に乗せるのはめっちゃ難しいから、こっちの有料プランでやるのがいいよね、ということを言っていた。これに関しては間違いないと思う。
仮に本気でこのビジネスに取り組もうとするなら、有料プラン一択だ。理由は彼女が述べる通りである。本当に資料の記載通りだとするならば、それほど法外に高い金額ではない。ちなみに彼女は大学生(という設定?)なので、クレカの分割で払ったらしい。
で、彼女はこのビジネスで、デカくていいテレビを1台買えるくらいの額を毎月稼いでいるという。これは大変リアルな額だと思った。もっと多いと思った。多分この額は本当だと思う。
確かに普通の大学生が手にするには大金ではあるが、毎日ブランド品を買い漁れるほどの金額ではない。しかしこの手のビジネスにしては十分にあり得る金額だし、再現性もあると思う。このビジネス自体は、別に悪いビジネスでもなんでもなくて、ただ形を変えた単なる営業活動にすぎない。
終わったあとA社の名前をググってみたら、同様の事例が出てきた。ネットの住民はこんなんで金が稼げるとは思えないと言っているが、それはそれでちょっと素人すぎるような気もする。多分このビジネスは、後ろにいる人たちがしっかりとした人たちであるという前提があれば、ちゃんとお金になるビジネスだと思う。この前提がなくて、例えば有料プランの料金入金したらA社とご一行もろとも音信不通みたいな感じだったら、当然だけど闇ビジネスになる。
でも、それくらいの額を稼いでいるのに、彼女に法務関連の知識があまりなさそうなのは若干怪しい。個人事業で稼ぐようになると、必然的に税務とか法務関連の知識はそれなりに最低限ついてくるものだ。それだけ稼いでいれば、間違いなく扶養からは外れているし、確定申告も自分でしなければならないと思うが、していないのだろうか。
A社の社員なのか?と聞くと、「社員ではない」「いつでもやめられる」じゃあ業務委託?と聞くと「う〜ん...」との回答だった。個人事業主と名乗らないならじゃあ開業届は出してなくて白色で確定申告してるんだね。
多分、A社とは単にユーザーとプラットフォーム運営という関係でしかないのだと思う。それ以上のことはわからなかった。
ビジネス面
彼女に「なぜあなたはこのビジネスの宣伝をしているのか(意訳)」という質問をしたら、彼女は「私は今幸せな人生を送れているから、それをもっと他の人に広めたい(意訳)」ということを言っていた。
そんなにいい人が世の中にいるかな。
儲かる話って、親しい友達ならまだしも、赤の他人になんて教えたくないでしょ。
彼女は「もしキミがこのビジネスを始めるなら、私が全力でサポートするよ✨(意訳)」と言ってくれたが、もし私が彼女の立場であったなら、勝手のわからないクソ素人の教育係なんて御免である。だって私が頑張っても、お前の収入が増えるだけで、私の収入増えないやん。
ここは、なんかチーム単位で実績に応じてインセンティブ出るとか、そういうのがあるのかも。それなら人増やす動機になる。
ネットに同様の事例がいくらでも出てくるので、彼らはおそらくA社に銃口を突きつけられてこのビジネスを広めるように言われているのではないかと思う。これは私の推測なので本気にしないでほしいけど。
また、この「ビジネス」は上から言われたことをただ愚直にやるだけなので、確かに簡単ではあるが、将来の仕事に活かせるスキル的なものが身につくかと言われると少々疑問ではある。彼女はストーリーで「個で稼ぐ力」みたいなことを言っていたような気がするけど、個で稼ぐ力というより結局は上の言うことをどれだけ愚直に聞いて実行できるかの社畜力が育成されていくのでは。
やること自体は愚直にやれば別に難しくないことなので、愚直にやってくれそうな真面目そうな人を探しているのだと思う。だから返信が早いとか、言葉遣いが丁寧とか、めちゃ興味持ってるとか、そういういい駒になりそうな奴にはいくらでも個別対応するのだろう。
そう、私のことである。
私がこのビジネスをやりたくない理由
楽しそうじゃないから
実は私はこれにちょっと似たことを一度やってみたことがある。それも情報商材を買って。それは2万円した。
当時の私は「スキマ時間でできる」「スマホ一台でできる」「簡単に月10万の副業収入」みたいな、同じ言葉に騙された。
確かに、そのビジネスは非常に簡単で、別に闇でもなんでもない、ただ出費した分だけリターンがある(かもしれない)ビジネスであった。マニュアル通り愚直にやればいいという点で、今回の彼女のビジネスと似ている。
私は結局そのビジネスを途中で完全に放棄してしまい、計3万円を失うことになった。3万円で済んだので社会勉強にはなった。放棄した理由が全然楽しくないからだ。
なんかいつもやってる仕事と違って、マニュアルに書いてあることを疑わずに何も考えずひたすらやるだけで、全然楽しくない。誰かのためになる「仕事」というより、「ビジネス」で、魚を相手に釣りをしている感覚だ。あ〜釣れないかな〜、釣れたらラッキー、魚GET。みたいな。
そうやって魚を手に入れるのも手法としてはアリだと思うけど、私はそのやり方に適性がなかった。つまりそういったビジネスで成功できる人は、金のために金のための自分を形成し、それを維持できる人だ。仮面をずっと被り続けられる人。
身近なところではYouTuberだ。成功しているYouTuberは、ただ一人の例外なく仮面をずっと被り続けられる人だ。自分がやりたいことと視聴者の求めていることは違う。自分がやりたいことではなくて、視聴者が求めている動画を出し続けること、それが別に苦ではないこと、続けられること、条件が全部そろって初めてYouTuberとして成功できる。
私は仮面を被り続けることができないので、その適性がある人が羨ましい。これは非常に残念なことだ。
私は自分が楽しいと思えないことに対するやる気が0なので、このようなビジネスに全くやる気が起きない。嘘。全くは嘘。やりたいけど、私の体では成功する未来が見えないので、やらない。
ただ、上から言われたことを愚直に実行できる人は挑戦してみてもいいのでは。見込み顧客に対して(重要)商品を販売するビジネスなので、話を聞く限りでは別に悪いビジネスではないし、再現性もそれなりにあると思う。
ただ、私とLINEで個人通話終了した10分後の彼女のストーリーが、おしゃれにできたおうちパスタ。これはちょっと怪しいね。
そんなにすぐ作れるのかい。
これも多分、より効率的に駒を集めるために、集客用のアカウントにあらかじめ用意してある画像や動画を投稿しているだけなのだと思われる。その証拠に、今日投稿されたストーリーは前に投稿された画像の使い回しだった。
彼女が本当にブランド品が好きなのかすら定かではないけれど、デカくていいテレビを1台買えるくらいの額というかまぁ60万円とはリアルな額だし、変なプライド捨てて言うこと聞いてればそれくらいは稼げるのだろう。