Amtrakでアメリカ大陸を横断する。
シカゴから太平洋側のサンフランシスコ(の近くのエミリービル)までを結ぶカリフォルニア・ゼファー号。
乗車時間は51時間となっているが、Amtrakは頻繁に遅れるらしいので実際の乗車時間はこれより長くなる可能性がある(遅れてもらって全然いいしなんなら2日くらい遅れて欲しい)。
シカゴのユニオンステーション。ここから出発する。
ホステルから徒歩40分。荷物は多分10kgくらいある気がする。シカゴ美術館の荷物預かりのお姉さんは、私の荷物が重すぎて爆笑していた。
建物全体が待合室になっている。
お値段は1250ドルで大体18万円くらい支払った。私は出発の2週間前くらいにギリギリで予約したので高くついたが、早めに予約すれば300ドルくらい安くとることができる。早く予約しておけばよかった。
人気列車なので2ヶ月後とかでも満室のことがある。
むちゃくちゃ高いが個室だしシャワーはついているしちゃんとした食事3食分の料金も全部込みなので、そんなに法外に高いという感じはしない。適正価格だと思う。
ちなみに座席車(コーチ)だと最安99ドルでシカゴからサンフランシスコまで移動できて、こっちは死ぬほど安い。
寝台の乗客はメトロポリタン・ラウンジを使用することができる。イギリスのファーストクラスラウンジと同じような感じで、ソフトドリンクとスナック類が取り放題。
落ち着いた雰囲気で発車時間まで優雅な時間を過ごした。
ポテチ3袋とペットボトルのジュースを3本飲んだ。おそらくこんなに飲んでいるやつはいない。普通に買ったら10ドルくらいすると思う。
コーヒーマシンはスターバックスと提携しているようで、本当にスタバで飲むコーヒーの味がした。ただ苦いだけのコーヒーじゃなくてちょっと高い味のするあのスタバの味が本当にする。
発車30分前になるとアナウンスがあって、乗車する人が列をなしてホームに向かう。
案内によると、寝台を使う人はラウンジでチェックインをしてから乗車するらしく、使う使わないは別としてラウンジには入る必要があるみたい。
ワシントンからシカゴまでも乗ったけど、でかい。
寝台個室(ルーメット)
個室は「ルーメット」で、日本でいうと285系サンライズのシングルツインと構造がほぼ同じ。
ふたりで使うこともできる。今回は2人用の個室を一人で使う。
荷物置き場もあるが、当然私のクソデカリュックは入らない。
タオルも貸してもらえる。共用部にシャワーがある。
コンセントと読書灯。つまみはアナウンスの音量調整だと思うのだが、そもそも壊れているのかいじっても何も変わらなかった。
水も無料で飲み放題。
ゴミ箱と小物置き。
寝る時は上段の寝台を展開できる。
日本の寝台と違い、途中駅でお客さんが降りた場合は、清掃して次のお客さんを入れていた。日本だと一度使った寝台は終着駅に着くまで使用できない。1両あたりアテンダントさんが2人乗っているのでできる芸当。人いっぱいいるっていいですね。
乗車するとフレンドリーなアテンダントさんが挨拶に来てくれる。後でディナーの時間を予約するためにアテンダントが来るので、と言っていたが、来ないまま17時を迎えたので直接聞きに行って18時の予約をゲットした。
21時くらいになるとアテンダントの方がベッドメイキングをしてくれる。座席がベッドに変身した。
途中駅で降りてみた様子。前の方に行って写真を撮ろうとすると、ものすごい勢いで作業員の人に怒鳴られたので退散した。
ラウンジカー。ハイデッカーで天窓がついているので、風景がよく見える。昼はもっと賑わっていた。
こっちはファミリールーム。めちゃ広い。こっちには1個室ごとにシャワーとトイレがついており、カシオペアツインみたいになっている。
食堂車
Amtrak旅行の最大の関門にして魅力が、食堂車である。
風景を楽しみながら優雅に食事というわけにはいかない。
なぜなら席が基本相席だからだ。
おしゃべり好きでフレンドリーなアメリカ人。
見ず知らずの人と旅の出会いと会話を楽しみながら、食事を共にする。
というと聞こえはいいが、実際は大変である。
しゃべる・食べる・見るのマルチタスクは無理。
しゃべるだけで精一杯なので、料理の味とか景色の綺麗さとかはもはやどうでもいい。しかしいい英会話の実践練習になったし、会話は弾むことが多くて楽しかった。
1日目の夜
初日の夜は4人席を一人で使えた。相席になるということを聞いていたので、あれ?相席じゃないの?と拍子抜けした。
前菜はサラダ。このバルサミコドレッシングが地味においしかった。バーベキューソースをそのままドレッシングにしたみたいな味。パンは海外のパンって感じのかたいパン。
メインディッシュでステーキが運ばれてきた。久しぶりの肉、感謝の気持ちを込めて合掌してからいただいたがこれはうまい。やわらかくておいしい。物価の高いアメリカでお目にかかれると思っていなかった巨大な肉塊、ワイルドな大きさに切ってかぶりつく。うまい。流石にブロンコビリーのには勝てないけど、うまい。流れ行く車窓をおかずに、さらにかぶりつく。と言っても車窓では味は変わらないので塩と胡椒をかけた。
一方で付け合わせの野菜類は味があんまりしなかったのでこれでもかと塩をかけて食べた。オレンジの実みたいなやつは何かと思って恐る恐る食べてみたらニンジンだった。
そしてデザートにチョコレートケーキ。デザートではなくてメインディッシュ並みのデカさをしている巨大なチョコの塊にホイップクリーム、その上からチョコクリームがかけられ、1次元上の甘さをしている。これは結構きつくて、体感で一番ボリュームがあった。
久しぶりのまともなご飯すぎて、車窓を見ながら優雅なディナー、みたいなことはできず、ひたすら食べることに夢中になってしまった。
2日目の朝
朝食を食べに食堂車に行く。今度は相席になった。
Arishというクリスチャンの若い夫婦?カップル?だった。食べる前に黙祷をしていた。宗教服を着ていて、敬虔に教えを守っているようだ。
気さくに話しかけてくれてかなり会話が弾んだ。この旅、え?俺英語結構喋れるやん!というシーンと、は?俺の英語力ゴミカスやん!のシーンが交互に訪れる。
会話が弾んだ代償として朝食はクッッッッッッッソおいしくなかった。オートミール。
フレンチトーストを頼んでいたつもりだったのだが、会話の傍らウェイターさんの質問に Yes, Yes please. と答えていたらこれが出てきた。しかもヨーグルトがいちご味でこれまた私の嫌いな味。
しかしゴタゴタ言っていられないのでとりあえず食った。これは本当にまずい。めちゃくちゃまずい。なんだこれは。
オートミールは初めて食べたが、味がしないしぬちゃぬちゃしていて気持ち悪い(そういう食べ物)。ヨーグルトと一緒に、喋りながら食べることでなんとか誤魔化した。そのヨーグルトも私の嫌いな味なので、まずいとまずいを合わせて少しでもマシにするというよくわからない状況。
英語で会話することで脳のリソースがそっちに持っていかれるのは非常にありがたい。
ヨーグルトを使い果たしてからは、塩と砂糖をこれでもかとかけてなんとか完食した。完食する必要はないんだけど、なんとなく悪い気がして完食した。
ちなみに諸外国の人はふつ〜に食事をめっちゃ残す。自分の食べたい量だけ食べて、あとは残す。ビュッフェでも同じなので、手がつけられていない食事が大量に残っていることは普通にある。潔いといえば潔いが、小さいときから残さず全部食えと教えられてきた私からみると驚きである。
その人たちチップで20ドルずつ2人で合計40ドルくらい渡してたけど、やばくね。気前良すぎでしょ。2ドルのシェイク買うかどうか10分悩んで結局買わない私の立場。
2日目の昼
昼は優しそうな老夫婦二人と相席になった。
ハンバーガー、めちゃくちゃうまい。朝にオートミールを食べているので、うまみが舌に染み渡ってくるのがわかる。
老夫婦二人に今回の旅のことを伝えると、You are so lucky! と言われ、世界中どこに行っても親が子に言うことって変わらないんだな〜と感じた。確かに私はラッキーだと思う。
普通の大学生は友達持ってて金持ってないからできないよね。
2日目の夜
夕飯は前菜がエビフライで、メインがサーモン、デザートがレモンケーキ。
サーモンっていうから生のサーモンが食べられるのかなと思ったら普通に焼いてあってあ〜そっすよね〜ってなった。
相席はシカゴ在住の熟年従兄弟コンビとの相席だった。こちらも話が弾んだ。話が弾みすぎてレモンケーキの写真撮り忘れてそのまま食べてしまった。
Your English is American!って言われてあれ〜(n回目)
3日目の朝
フレンチトースト。夫婦二人と、おばあちゃん1人と、4人相席だった。私以外の3人はデンバーから乗車したと言っていた。
ここまで結構不自由なく会話できていたが、ここの会話は全然わからなかった。ネイティブ同士なので当然ネイティブのスピードで会話が進行していくが、全然何言ってるかわからない。話に入ることすらできないので、ニヤニヤしながら相手が笑ったところでちょっと笑うという典型的な一人だけ会話に入れてない人になっていた。
最後、「ラクーンって見たことある?」と聞いてくれて、「ラクーンってなんですか?」と聞いたらスマホの画像を見せてくれた。アライグマだった。
どうやらアライグマの話をしていたらしい。「えええwwwアライグマの話してたんですか?wめっちゃ真剣に聞いてたんですけど、大きい犬が寝そべっている話してるのかと思ってました!もっと英語勉強しなきゃw」と言って、すごすごと退散した。
3日目の昼
昼は昨日と同じバーガーにしたが、昨日とは異なりチーズがかかっていておまけにバターケーキまでついてきた。
終了間際で混んでなかったからかな。
相席の人はお母さんと若い息子さんの2人で、朗らかな人でいっぱい質問してくれた。1on1で会話する分には英語力の問題はない。まぁ英語に限らずとも、会話というのは語学レベルが低い方に合わせるわけなのでレベルの低い方から見れば会話が成立しているように見えるのは当然なのだが...。
着席早々、日本人?と聞かれたのでびびった。
サンフランシスコまで
シカゴを出てすぐは、アメリカの郊外っぽい住宅地が続く。
トイ・ストーリーで出てくるような。
ちょっとすると広大なトウモロコシ畑になる。
夕方になっても、まだトウモロコシ畑の中を走っている。
一回目の夜がくる。
目を覚ますと、どこかの駅に停車していた。
翌朝。たぶんデンバーのあたりだと思う。
ここまではひたすら平地なので、ひたすらかっ飛ばして、一晩明かしただけでもうルートの半分以上は走ってしまう。あと2日あるのにそんなに飛ばさなくてもいいんじゃないかというくらい飛ばす。
デンバーを出ると、山が見えてくるようになって、日本の車窓に似てくる。
これからロッキー山脈越えが始まる。それで飛ばせないので時間がかかる。
何もない丘を、S字でひたすら登っていく。
登っていくと岩がゴツくなってくる。
高原っぽくなってくる。あと1日くらいはこんな感じのところをずっと走る。
山の肌が赤い。
列車は川沿いを時速40km/hくらいでノロノロ走っている。土地は赤みを帯びてきてマイクラのメサバイオームみたいな感じになった。
この川がこの地形を作るのに何万年かかったのかな。侵食の力スゲ〜と思った。
谷底を走っている。見上げるような岩。
よくこんなところに線路通したなと感心する。
反射しているのは湖。
ここからちょっと行ったところにあの有名なグランドキャニオンがある。
山が終わると、不毛な大地を走るようになる。今までノロノロと走っていたが、平地になるとスピードも上がる。
朝陽とともに目覚めると、アメリカの大地が広がっている。
また軽い山登りを始めた。
山登りが終えて、また平地に戻る。終点のエメリービルまではもうすぐ。
街になってきた。
サンフランシスコの大陸側の玄関口、エメリービルに到着した。
なんと、ほとんど定刻。他の乗客はラッキーだと言っていたが、全然ラッキーではない。
エメリービルはサンフランシスコの対岸にある。海を挟んでいるのでサンフランシスコの市内までは通せなかったらしい。
駅名標もAmtrak自慢の立派な感じのやつじゃなくて、サンフランシスコへの接続駅です、みたいな書かれ方をしている。ほんとはここで終点にしたくないんやけど、海があって仕方なくやで...むむ、無念。みたいな。大人の事情で市街地まで通せなくてこうなってしまった暫定終着駅といった感じで、日本で例えるなら北海道新幹線の新函館北斗駅が近い。
Amtrakのエメリービル駅はかなり不便な場所にある。周りにも何もなくて、ここからシカゴまで行く長距離夜行列車が出発するとは考えられない。
サンフランシスコまでの切符を買っていれば、エメリービル駅から接続バスに乗車できるのだが、何も考えていない私はエメリービルまでの切符しか買っていなかった。サンフランシスコに近い街だし、接続バス以外にもサンフランシスコに行く方法はあるでしょ。と思っていた。
が、別にないみたい。この駅とその周り、本当にAmtrakの乗客しか使わないんだね。多分地元の人は車で移動するのだと思う。
ホテルも近辺になく、仕方ないので、サンフランシスコ中心部まで行くメトロの最寄り駅まで40分歩いて中心部に出た。
涼しくていい。ここで5日くらい滞在して、日本に帰る。
全然5日も滞在したくなくて、2日くらいで帰りたいのだが、ZIPAIRのチケットが変更キャンセル不可なので仕方ない。格安航空だとこういうときに不便だ。
感想
とても素晴らしい体験になった。雄大な景色、そして食堂車での英会話、係員の適当で自由な対応など、色々とアメリカらしい体験ができる。18万円と結構な値段がするが、体験としてであれば満足できる。車内でのあり余る時間を、車窓をつまみにしつつ、考え事などをしながら贅沢に過ごすことができるのも良かった。こんな時間は普段あまり取れないから。
次、もし乗る機会があれば、シカゴからロサンゼルスのサウスウエスト・チーフに乗ってみたいが、向こう10年くらいはもういいかも。何よりアメリカにいると金がどんどんなくなっていくので、それによるストレスがでかい。