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東京大学 理学系研究科天文学専攻 2025 天文学解答

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問1 (a) 光子1個が微粒子に与える運動量の計算

まず、1個の光子が衝突・反射する際の運動量変化を考えます。

1. 光子の運動量 エネルギー ϵ\epsilon を持つ光子の運動量の大きさ pp は、以下の式で表されます。

p=ϵcp = \frac{\epsilon}{c}

2. 幾何学的配置の整理 図1を参照すると、太陽からの光は左から右へ(太陽 \to 微粒子の方向)入射しています。 微粒子の表面上の点Aにおいて、中心からAに向かう方向(法線ベクトル n\vec{n} の方向)と、太陽に向かう方向(入射光と逆方向)のなす角が θ\theta です。 これは、入射角が θ\theta であることを意味します(入射光線と法線のなす角が θ\theta)。

3. 反射による運動量変化 鏡面反射(弾性衝突と同様)なので、法線方向の成分のみが反転し、接線方向の成分は変わりません。

  • 入射光子の法線方向成分: pcosθ-p \cos\theta (表面に向かって突き刺さる向き)
  • 反射光子の法線方向成分: +pcosθ+p \cos\theta (表面から跳ね返る向き)

よって、光子の運動量の変化 Δpphoton\Delta p_{\text{photon}}(法線方向)は:

Δpphoton=poutpin=pcosθ(pcosθ)=2pcosθ\Delta p_{\text{photon}} = p_{\text{out}} - p_{\text{in}} = p \cos\theta - (-p \cos\theta) = 2p \cos\theta

4. 微粒子が受け取る力積(運動量) 作用・反作用の法則により、微粒子が受け取る運動量 ΔP\Delta P は、光子の運動量変化と大きさが同じで逆向き(微粒子の中心に向かう向き)です。 大きさ:2pcosθ=2ϵccosθ2p \cos\theta = \frac{2\epsilon}{c} \cos\theta 向き:点Aから微粒子の中心に向かう方向

5. 太陽から微粒子に向かう方向成分の抽出 求めたいのは「太陽から微粒子に向かう方向」の成分です。 微粒子の中心に向かうベクトル(法線の逆)と、太陽から微粒子に向かう光の進行方向とのなす角は θ\theta です。 したがって、求めた運動量をさらに cosθ\cos\theta 倍して、光の進行方向へ射影します。

ΔPsun-particle=(2ϵccosθ)×cosθ=2ϵccos2θ\Delta P_{\text{sun-particle}} = \left( \frac{2\epsilon}{c} \cos\theta \right) \times \cos\theta = \frac{2\epsilon}{c} \cos^2\theta

 

\frac{2\epsilon}{c} \cos^2\theta

問1 (b) 太陽放射が微粒子に及ぼす力(光圧による力)

(a)の結果を使って、微粒子の半球全体(光が当たっている面)で積分を行います。

1. 単位時間あたりのエネルギーと光子数 太陽から距離 dd における単位面積・単位時間あたりのエネルギー(エネルギー流束密度、あるいは強度)II は、太陽の全光度 LSL_{\text{S}} を半径 dd の球の表面積で割ったものです。

I=LS4πd2I = \frac{L_{\text{S}}}{4\pi d^2}

2. 微小面積への入射 微粒子の表面上で、角度 θθ+dθ\theta \sim \theta + d\theta の範囲にあるリング状の微小面積 dSdS を考えます。

  • dS=(2πrsinθ)(rdθ)=2πr2sinθdθdS = (2\pi r \sin\theta) \cdot (r d\theta) = 2\pi r^2 \sin\theta d\theta
  • この面への入射エネルギー流束は、面が傾いているため IcosθI \cos\theta となります。
  • 微小時間 Δt\Delta t にこの面積に入射するエネルギーは dE=IcosθdSΔtdE = I \cos\theta \, dS \, \Delta t です。

3. 微小面積が受ける力 (a)より、エネルギー ϵ\epsilon あたりの運動量付与は 2ϵccos2θ\frac{2\epsilon}{c}\cos^2\theta でした。つまり「力(単位時間の運動量変化)/ 入射エネルギー(単位時間のエネルギー)」の比率は 2ccos2θ\frac{2}{c}\cos^2\theta となります。

微小面積 dSdS が受ける、太陽から遠ざかる方向の力 dfdf は次のように書けます。

df=(単位時間の入射エネルギー)×2ccos2θdf = (\text{単位時間の入射エネルギー}) \times \frac{2}{c}\cos^2\theta df=(IcosθdS)<motimes2ccos2θdf = (I \cos\theta \, dS) \times \frac{2}{c}\cos^2\theta df=I(2πr2sinθdθ)cosθ2ccos2θdf = I (2\pi r^2 \sin\theta d\theta) \cos\theta \cdot \frac{2}{c}\cos^2\theta

整理すると:

df=4πr2Iccos3θsinθdθdf = \frac{4\pi r^2 I}{c} \cos^3\theta \sin\theta \, d\theta

4. 全体での積分 これを光が当たる半球全体(θ=0\theta = 0 から π2\frac{\pi}{2})で積分します。

F=0π24πr2Iccos3θsinθdθF = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \frac{4\pi r^2 I}{c} \cos^3\theta \sin\theta \, d\theta

変数変換(x=cosθ,dx=sinθdθx = \cos\theta, dx = -\sin\theta d\theta)を行うと、積分部分は 14\frac{1}{4} となります。

0π2cos3θsinθdθ=[14cos4θ]0π2=0(14)=14\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^3\theta \sin\theta \, d\theta = \left[ -\frac{1}{4}\cos^4\theta \right]_0^{\frac{\pi}{2}} = 0 - (-\frac{1}{4}) = \frac{1}{4}

よって、

F=4πr2Ic14=πr2IcF = \frac{4\pi r^2 I}{c} \cdot \frac{1}{4} = \frac{\pi r^2 I}{c}

最後に I=LS4πd2I = \frac{L_{\text{S}}}{4\pi d^2} を代入します。

F=πr2cLS4πd2=LSr24cd2F = \frac{\pi r^2}{c} \cdot \frac{L_{\text{S}}}{4\pi d^2} = \frac{L_{\text{S}} r^2}{4 c d^2}

 

問1 (c) 微粒子の公転周期

微粒子には「太陽からの重力(引力)」と「(b)で求めた光圧による力(斥力)」の2つが働いています。これらが向心力となって円運動しています。

1. 力のつり合い(運動方程式 微粒子の質量を mm、公転速度を vv、角速度を ω\omega、周期を TT とします。 中心方向(太陽向き)を正とすると、運動方程式は以下のようになります。

mdω2=F重力F光圧m d \omega^2 = F_{\text{重力}} - F_{\text{光圧}} md(2πT)2=GMSmd2LSr24cd2m d \left( \frac{2\pi}{T} \right)^2 = G \frac{M_{\text{S}} m}{d^2} - \frac{L_{\text{S}} r^2}{4 c d^2}

2. 周期 TT を求める

md4π2T2=1d2(GMSmLSr24c)m d \frac{4\pi^2}{T^2} = \frac{1}{d^2} \left( G M_{\text{S}} m - \frac{L_{\text{S}} r^2}{4 c} \right) T2=4π2md3GMSmLSr24cT^2 = \frac{4\pi^2 m d^3}{G M_{\text{S}} m - \frac{L_{\text{S}} r^2}{4 c}}

分母を mm で割って、TT について平方根をとります。

T=2πd3GMSLSr24mc

 

問2 (a) エネルギー保存の式

まず、系の設定を確認します。球対称な質量分布の中にある質量 μ\mu の小片(テスト粒子)の運動を考えます。

1. 働く力とポテンシャルエネルギー ニュートンの殻定理(Shell Theorem)により、小片が受ける重力は、「初期位置 R0R_0 の内側にある質量 M(R0)M(R_0)」による重力のみです。この質量は、運動中も一定です。 中心からの距離が RR のときの位置エネルギー U(R)U(R) は以下のようになります。

U(R)=GM(R0)μRU(R) = -G \frac{M(R_0) \mu}{R}

2. 力学的エネルギー保存則 運動エネルギー KK12μR˙2\frac{1}{2}\mu \dot{R}^2 です。全エネルギー EE は保存されます。

  • 初期状態 (t=0t=0): 位置 R0R_0、速度 R˙=0\dot{R} = 0E0=GM(R0)μR0E_0 = - G \frac{M(R_0) \mu}{R_0}
  • 任意の時刻 (tt): E(t)=12μR˙2GM(R0)μRE(t) = \frac{1}{2}\mu \dot{R}^2 - G \frac{M(R_0) \mu}{R}

よってエネルギー保存の式は

12μR˙2GM(R0)μR=GM(R0)μR0\frac{1}{2}\mu \dot{R}^2 - G \frac{M(R_0) \mu}{R} = - G \frac{M(R_0) \mu}{R_0}

 

問2 (b) 圧潰するまでの時間と R0R_0 への依存性

1. 微分方程式の整理 (a)の式の両辺から μ\mu を消去し、dRdt\frac{dR}{dt} について解きます。

R˙2=2GM(R0)(1R1R0)=2GM(R0)R0RRR0\dot{R}^2 = 2 G M(R_0) \left( \frac{1}{R} - \frac{1}{R_0} \right) = 2 G M(R_0) \frac{R_0 - R}{R R_0}

落下(R˙<0\dot{R} < 0)のためマイナス符号を選び、変数分離します。

dt=12GM(R0)RR0R0RdRdt = - \frac{1}{\sqrt{2 G M(R_0)}} \sqrt{\frac{R R_0}{R_0 - R}} \, dR

2. 積分による時間の計算 t=0t=0 で R=R0
t=TT  で R˙=0積分します。

T=12GM(R0)R00RR0R0RdR=R02GM(R0)0R0RR0RdRT = - \frac{1}{\sqrt{2 G M(R_0)}} \int_{R_0}^{0} \sqrt{\frac{R R_0}{R_0 - R}} \, dR = \sqrt{\frac{R_0}{2 G M(R_0)}} \int_{0}^{R_0} \sqrt{\frac{R}{R_0 - R}} \, dR

3. 置換積分 置換 R=R0cos2θR = R_0 \cos^2 \theta を用います。

0R0RR0RdR=2R00π2cos2θdθ=R0[θ+12sin2θ]0π2=πR02\int_{0}^{R_0} \sqrt{\frac{R}{R_0 - R}} \, dR = 2 R_0 \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^2\theta \, d\theta = R_0 \left[ \theta + \frac{1}{2}\sin 2\theta \right]_{0}^{\frac{\pi}{2}} = \frac{\pi R_0}{2}

4. 結果の整理と R0R_0 依存性の確認 積分結果を TT  の式に戻します。

T=R02GM(R0)πR02=π2R032GM(R0)T = \sqrt{\frac{R_0}{2 G M(R_0)}} \cdot \frac{\pi R_0}{2} = \frac{\pi}{2} \sqrt{\frac{R_0^3}{2 G M(R_0)}}

ここで、一様密度 ρ\rho より M(R0)=43πR03ρM(R_0) = \frac{4}{3}\pi R_0^3 \rho を代入すると、

T=π2R032G43πR03ρ=π238πGρ=3π32GρT = \frac{\pi}{2} \sqrt{\frac{R_0^3}{2 G \cdot \frac{4}{3}\pi R_0^3 \rho}} = \frac{\pi}{2} \sqrt{\frac{3}{8 \pi G \rho}} = \sqrt{\frac{3\pi}{32 G \rho}}

最終的な時間 TT には R0R_0 が含まれていません。

解答 (b): 到達するまでの時間 TT

T=3π32GρT = \sqrt{\frac{3\pi}{32 G \rho}}

であり、R0R_0 に依存しない。

 

問3 

この問題は大きく2つのパートに分かれます。

質量を失った後の地球の軌道半径を求める(角運動量保存則) その時の太陽半径と、現在の太陽半径の比を計算する(幾何学的関係)

ステップ1:質量放出に伴う地球軌道の変化

まず、太陽が質量を失うと地球の公転軌道半径がどう変わるかを考えます。 問題文の仮定 (i) に「質量放出は地球の公転周期に比べてゆっくり」とあります。これは「断熱近似」が成り立つことを意味しており、この場合、軌道の形(円)を保ったまま徐々に変化します。

また、仮定 (i) で「球対称に進行」とあるため、太陽から放出される物質が地球に対して回転方向の力を加えることはありません(トルクが0)。 したがって、地球の公転の角運動量は保存されます。

1. 角運動量保存の式 地球の質量を mm、太陽の質量を MM、公転軌道半径を rr、公転速度を vv とします。 万有引力が向心力となるため、運動方程式は:

mv2r=GMmr2v=GMrm \frac{v^2}{r} = G \frac{M m}{r^2} \quad \Rightarrow \quad v = \sqrt{\frac{GM}{r}}

地球の(単位質量あたりの)角運動量 LL は:

L=r×v=rGMr=GMrL = r \times v = r \sqrt{\frac{GM}{r}} = \sqrt{G M r}

質量放出の前後で、この角運動量 LL が一定(保存される)であるため、以下の関係が成り立ちます。

GM現在r現在=GM未来r未来\sqrt{G M_{\text{現在}} r_{\text{現在}}} = \sqrt{G M_{\text{未来}} r_{\text{未来}}}

両辺を2乗して GG を消去すると、以下の非常に重要な関係式が得られます。

M現在r現在=M未来r未来M_{\text{現在}} \, r_{\text{現在}} = M_{\text{未来}} \, r_{\text{未来}}

つまり、「中心星の質量」と「軌道半径」の積は一定に保たれます。質量が減れば、その分重力が弱くなり、軌道は外側に広がります。

2. 未来の軌道半径 r未来r_{\text{未来}} の計算 現在の太陽質量:M現在=MSM_{\text{現在}} = M_{\text{S}} 現在の地球軌道半径:r現在r_{\text{現在}} 未来の太陽質量:30%30\% 失われるので、M未来=0.70MSM_{\text{未来}} = 0.70 M_{\text{S}} これらを上の式に代入します。

MSr現在=0.70MSr未来M_{\text{S}} \, r_{\text{現在}} = 0.70 M_{\text{S}} \, r_{\text{未来}} r未来=10.70r現在r_{\text{未来}} = \frac{1}{0.70} r_{\text{現在}}

ステップ2:太陽半径の倍率計算

次に、太陽の大きさの変化を計算します。

1. 未来の太陽半径 RS'R'_{\text{S}} 問題文に「太陽表面がその時点での地球の公転軌道にちょうど達した」とあります。 つまり、未来の太陽半径 RS'R'_{\text{S}} は、先ほど求めた未来の軌道半径 r未来r_{\text{未来}} と等しくなります。

RS'=r未来=10.70r現在R'_{\text{S}} = r_{\text{未来}} = \frac{1}{0.70} r_{\text{現在}}

2. 現在の太陽半径 RSR_{\text{S}} 現在の太陽の視半径(見かけの半径)が θ=0.27\theta = 0.^\circ 27 であることが与えられています。 地球から太陽までの距離 r現在r_{\text{現在}} と、太陽の実半径 RSR_{\text{S}} の関係は、直角三角形の三角比で表せます。

tanθ=RSr現在\tan \theta = \frac{R_{\text{S}}}{r_{\text{現在}}}

よって、

RS=r現在tan(0.27)R_{\text{S}} = r_{\text{現在}} \tan(0.^\circ 27)

3. 倍率の計算 求めたいのは「未来の半径は現在の何倍か」なので、比率を計算します。

倍率=RS'RS=10.70r現在r現在tan(0.27)\text{倍率} = \frac{R'_{\text{S}}}{R_{\text{S}}} = \frac{\frac{1}{0.70} r_{\text{現在}}}{r_{\text{現在}} \tan(0.^\circ 27)}

r現在r_{\text{現在}} が約分されて消えます。

倍率=10.70×tan(0.27)\text{倍率} = \frac{1}{0.70 \times \tan(0.^\circ 27)}

ここで数値を計算します。 tan(0.27)0.004712\tan(0.27^\circ) \approx 0.004712

倍率=10.70×0.004712=10.0032984303.17\text{倍率} = \frac{1}{0.70 \times 0.004712} = \frac{1}{0.0032984} \approx 303.17

4. 有効数字の処理 有効数字2桁に丸めると、3.0×1023.0 \times 10^2 となります。

 

3.0×1023.0 \times 10^2 \text{ 倍}

ポイント

直感とのギャップ: 太陽が質量を失うと、引力が弱まるため、**地球の軌道自体が遠ざかる**($M r = \text{一定}$)というのがポイントです。太陽が地球を飲み込むためには、地球が逃げた先の軌道まで膨張しなければなりません。

近似計算: 角度が非常に小さい場合(0.270.27^\circ は約 0.0047 rad0.0047 \text{ rad})、tanθθ\tan \theta \approx \theta (rad) の近似を使っても計算できます。