ひとばん寝かせたカレーはとてもおいしい

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備後落合駅と比婆山温泉に行ってきた

備後落合駅

備後落合駅

2021年2月4日。備後落合駅にやってきました。

備後落合駅はいちど訪れてみたかった駅です。かつては相当賑わったそうですが、今では無人化し駅前にも何もなくなってしまい、秘境のターミナル駅と言われています。落合は「落ち合う」という意味で、交通の要所に付けられる地名です。今でも3方向に分岐している線路が、かろうじてその面影を残している。と、ここまでは予備知識です。

駅は四方を山に囲まれた谷底に位置し、駅前には道路が通るのみで何もありません。駅を出てすぐ右を向くとこんな感じ。下り坂になっていて、下りた先に国道314号線があります。

備後落合駅前

駅前

いちばん近い食事処(ドライブインおちあい)まで1㎞です。ドライブインおちあいでは往時の名物「おでんうどん」を食べることができます。到着時駅にはボランティアガイドの永橋さんがおり、カメラを片手にした数名の観光客で賑わっていました。元国鉄機関士として備後落合駅に勤めていた方。近所に住んでいて、ボランティアで解説をしていて、これが生きがいなんだそうです。

 

三好方面から新見方面

三次方から新見方

駅舎から三次方面

駅舎から三次方

構内には、かつてこの駅が交通の要塞として重要であったことを物語る遺構が残っています。

転車台の画像

転車台

 

色々なお話を伺いましたが特に印象に残ったのは、急行やまのゆ号の話でした。備中神代から備後落合まで来るときに車内から東城駅のホームを眺めていたら、うっすらと「やまのゆ 自由席」の文字を見つけ、ここにも往時は急行が走っていたのかと思っていました。

これを永橋さんに質問すると、嬉しそうに答えてくれました。広島から6両で備後落合までやってきて、2+4に切り離し、一方は「やまのゆ」として津山方面へ、もう一方は「千鳥」として木次線米子方面へ行っていたんだとか。

それからここら辺は豪雪地帯で、雪の季節には雪捨て列車が走っていたそうです。機関車が広島方面から空の貨車をつないでやってきて、駅の雪を掻いて貨車に積み、鉄橋の上で川の下に落として処理していたらしいです。駅の雪掻きはボランティアではなく、国鉄から日当六千円の賃金が出たそう。

国鉄は必ず列車を通すという使命感があり、そのためのお金は厭わなかったそうです(だから赤字が膨れ上がったんですね)。

多分掘ったら無限に話が出てくると思います。また遠くないうちに、再訪してお話の続きを聞きたいです。

駅ノートの画像

オタクすごい

駅ノートにすごいのを見つけました。相当暇だったのかな。スーツ氏の達筆な一言も見つけました。

夜は備後落合(比婆山温泉)に宿泊しました。宿は「比婆山温泉 熊の湯旅館」さん。近辺で宿はここしかない(はず)です。前日までに伝えておけば備後落合駅まで送迎してくれます。比婆山温泉というものの、比婆山駅とは逆の方向にあります。

外観の画像

外観

宿は山間の谷間にポツンと位置します。近くには川と道と、廃屋しかありません。廃屋のちょっと上には民家がありますが、人が住んでいるかどうかは不明です。足跡がないので多分住んでないんでしょう。この宿が唯一の「比婆山温泉」の旅館ということになります。玄関先には「比婆山温泉湯元」と書いてありました。

遠くから見た画像

本当に何もない

中央ちょい左にある建物が宿です。今日の宿泊客は私ひとりで、到着すると八畳一間の部屋に案内されました。

部屋の画像

部屋

合宿所のような雰囲気で、バスケ部の合宿ならこの部屋に8人ブチ込まれるでしょうね。実際合宿所として使われることが多いみたいで、今年は学校の合宿が軒並みキャンセルで打撃だとおっしゃっていました。

引き戸に鍵はかからず、金庫は最初から開かずの金庫でした。今日は私ひとりなのでそんなに心配はありませんが、ほかにお客さんがいるとちょっと怖いかもしれません。カメムシが出るという話でしたが、冬場だからか見当たりませんでした。もちろん風呂トイレは共同です。

Wi-Fiはなく電波も弱いです。テレビは主要6チャンネルぐらいしか映りません。

大浴場の画像

大浴場

お風呂は右の隅にあるタイル張りの浴槽です。温泉の雰囲気はあまりありません。加温や循環の設備はなく、蛇口があるのみです。

浴槽の上の蛇口からは「比婆山温泉」が出てくるので、一応は源泉かけ流しということになります。皮膚炎にいいらしいですが、詳細不明。

お湯は無色透明で、若干とろみがあるような、ないような。風呂上りは塩素のような臭いがします。塩素消毒はしていないはずなので多分元々こういう臭いなんだと思いますが。

洗い場はいくつかあるものの、シャワーヘッドは1カランしかなく、スタンドに掛けるとなぜか冷水になるという謎仕様でした。ほぼ冷水で我慢して浴びました。朝風呂はいただけないようです。

夕食の画像

夕食

夕食は写真+味噌汁、鍋の中はすき焼きでした。ご飯は好きなだけよそって食べられて、合宿みたい。ご飯と味噌汁とすき焼き以外は冷めてしまっていて、うーん、美味しくない(直球)。これはめちゃくちゃ寒いので、仕方ないことではありますが。

すき焼きの鍋の固形燃料が残っているうちに、白身魚を鍋にぶち込んで温めて食べました。唐揚げはぶち込むのを忘れたため、私がいままで食べた唐揚げのなかでいちばん冷たかったです。

しかもこの唐揚げ、あんかけだったのでより冷たさに拍車が。あと卓上のソースの期限が半年切れていました。半年はすごいな。

私は添加物は気にするのですが、期限はあまり気にしないので普通にキャベツにかけて食べました。

まぁしかし、こんな山奥で、食べられるご飯が出てくるだけでもありがたいことです。

部屋に戻ると布団が敷かれていました。セルフサービスと聞いていたんですが。玄関が施錠されていて夜間は外には出られませんでしたが、窓から星がとてもよく見えました。

エアコンの運転が止まると、川のせせらぎが響きます。

翌朝も備後落合駅まで送っていただきました。今後もひっそりと、末永く頑張ってほしいです。

朝は永橋さんが駅に再びやってきてくれて、見送りがてら出発までお話をしてくれました。永橋さん目当てのリピーターも多いそうです。100円稼ぐのに10万円必要なところなので、ぜひ乗車券を買って、備後落合を訪れてみてください。